大変な事を忘れていた!!
マジックのネタでもなければ、スタジオに入る時間でもない。
それは、美少年のコーナーに出るときは、母親と一緒でなければならないのだ。
と言っても、別に恥ずかしい訳ではない。自分と、母親はすごいそっくりで、
笑えてしまうだけである。
(ちなみに事務所では、「シュートが、女装したみたい」とか、
「お母さんがシュートに、ばけてるんじゃない?」などと、みんなで笑ったのを覚えている。)
しかし、こればっかりはしょうがない。さすがに覚悟を決めた。
(そこまで言うと母上に失礼だぞ!)
−スタジオ入り−
「おはようございます・・・。」
控え室に入る。当然の事だが新人一発芸タレントは、
大部屋と決まっている。が、子供連れのお母さんや、
その他の素人さんと一緒だから、さすがに部屋が狭く感じる。
「あっ、おはようございます。僕も美少年のコーナーに出るんですよ。」
「あそうなんですか。と言うことは、何か一芸されるんですよね?」
「ええ、そうなんです。ぼくは、生け花を少々・・・」
「へーそうなんですか。(僕は、マジックを十二年やってるけど、
この人はどうなんだろう)どの位なさっているんですか?」
「数日です。」
「は?」
「数日ですよ。」
「はあ。そうなんですか。・・・」
話が終わってしまった。いや、続けなければ・・・
「僕はマジックで出るんですよ。」
「え、マジックですか?」
「ええそうです。」
「じゃあもし良かったら、少し見せてくださいよ。」
「いいですよ。」(ちょうど番組の良い練習になるな。)
ひと通りマジックを見せた。そうすると、ADの人や、出演者が
周りに集まりはじめた。
当然、人が増えれば気合いも入る。そして演技終了。
とりあえず、見てる人みんなが喜んでくれたので満足だし、
自分で言うのも何だけれど、良い演技だった。はずなのに・・・
ただ一つ誤算だったのは、その後子供に囲まれてしまった事だった。
ーそして本番ー
ついに本番が始まった。僕の出番は三番目だ。
呼ばれるまでネタの確認をしていたら、母親が
「本番は、演技した方がいいかしら?」
「えっ・・・任せるから・・・適当に素でいけば?」
「うんがんばる!」
「・・・何を張り切ってるんだか」
「でも中山秀ちゃんは別にそんなに好きじゃないんだけどなあ」
「ああそう」(選ぶな選ぶな!)
そんな事をしてるうちに、母親が呼び出される。
よし次だな!
<それではプロフィールをどうぞ!おお似てるタレントは林家〇平!>
<ブーブー、〇平がブー!>by飯島愛さん
(ガックリ・・・)
<それでは息子さんを呼んでください。>
<シュートー!>・・・シュート登場
(家でシュートなんて呼んだ事もない癖に!)
<緒川集人二十二才です。>
<おっと、確かに、〇平さんににてますね>
(そればっかりだよ!)
<まあ、それにしてもお母さん、十七才の時に
アメリカまで一人で行かせるのは心配じゃなかったですか?>
(おっと、母さん余計なこと言うなよ!)
<いえ、兄弟が多いものですから、ちょうど食費が・・・>
(あちゃー、やっちゃったよ・・・)
<ああそうですかー!>(客席、タレントおおうけ!)
(あら、受けてるよ・・・)
<それでは、マジックの方をよろしくお願いします>
(以下マジックショー)
マジック自体は何事もなく、いやタレントさんたちにバカ受けで終わった。
結果的にはこれでレギュラーが決まった訳だが、
とにかく因縁の美少年コンテストは幕を閉じたのである。
帰りぎわの、母の嬉しそうな顔を見て、喜んでもらえたんなら
またいつか一緒にTVに出るのもいいかなと思った。
PS
この後母親は、番組を見て大喜びしていた。
(これには深い訳があります。その理由は・・・<緒川集人物語>をご覧ください。)