マジシャンが消えた
1996年 春
『優勝』の重荷を背負って大会に向かう。
1995年の大会に初参加、初優勝してから、番組の企画が持ち上がりあっと言う間に自分の身の周りが変化した。
準レギュラーのマジックの番組に、私を変えてくれた将棋番組『逆転十番勝負』の収録が控え、新作のマジックに、将棋の勉強に、追われながらも必死に毎日を過ごし、マジックへの思いも、演じた後の感覚さえも違うように感じられた。
そんな順風満帆の中で春の大会が近づいていた。そんな中…マジシャンが一人…いなくなった 
大会4日前、番組前日に、買い物に行った兄弟弟子の一人が帰ってこない…
もう買い物先の店は閉まる時間だ…
何かあったんじゃないか?交通事故か事件に巻き込まれたとか…最初は冗談も交じっていた会話だったが事態は警察に連絡することまで発展した。
もちろん自宅へも連絡を入れたが帰っていない…何があったんだろう
その日は明日の上ダマの最終打ち合わせが夜にあった。
急遽、夕食のメニューを変更し指示をして、私は先生と打ち合わせに向かうエレベーターを降りると下のゴミ箱が変形していた。.
周りにはゴミが散らばり、ケンカの後をうががわせていた…
打ち合わせ最中も事務所との連絡を取り合った一向に行方が分からない
「どうかしたんですか」 
スタッフが気遣う
「いや、ちょっと一人男の子が買い物いったっきり戻らないんですよ」
 …先生が答える
「うちもよくありますよ 弁当代20人分を持ってよくいなくなる奴が…」
 …そんな話が飛び交う。
TVの世界では俗にAD(アシスタントディレクター)と呼ばれるディレクターになるために勉強している?
ディレクターのアシスタントとして雑用を行うためにいる?だろう人がいて 相当怒られたり、買い物に飛び回されたりと仕事はきついと聞くでも、どんな世界でも修行はそんなものだと思う デモ、その子は違う…そんなはずは無い…入ったばかりの新人という訳じゃないし、何年も一緒に頑張っているのだから…何かがあったはずだ…
事務所に戻ってからも行方不明のままだった。
翌日、リハーサル終了後に事情がだいだい分かった。
買い物に出す間際に、何気に使った私の言葉が、彼を傷つけたらしかった。
そんなことは、いつも使っている言葉じゃない…なんで…食事も作らなくちゃ、打ち合わせの準備もしなくちゃあれもこれもと、バタバタしているときに単純なミスを叱った。
確かに叱ったけれど、初めて叱った訳じゃない…いつものことじゃない。
私のせい…もしかしてと若干の責任を…気になってはいないこともなかったが、そんなことが理由とは思ってもみなかった。
しかし、先生からは はっきりと私に言った。
「お前のその言葉の悪さが、1人のマジシャンをダメにした…」と
が…収録はもうすぐ始まる…先生から
「自分か、そいつか、どちらかを取れ。」
「自分です」
と答えた。
「当たり前だ お前はうちの他の沢山のマジシャンを背負って番組に出て入るんだ。お前一人でやっていることではない。他の子には、俺が、お前が正しかろうと悪かろうと言うとおりにしろと教育している。だからこそ、お前も言い方を考えなければならない。でも、それを理由にここまで育ててくれたことを恩を仇で返すのはそいつが悪いそんなことで駄目になったものはしょうがない。 逃げたものはきれいいな…ただ、いいか1人のマジシャンを、お前がダメにしたことを一生背負って生きて行けその分をお前が埋めろ」
と、言われた。

「本番ですスタジオの方へお願いします」
 −ミルキーKeikoの時間が始まる